その日は協会主催の夏祭りだった。たこ焼き、綿飴、焼きそば、カキ氷、金魚すくいに、射的。年に一度の祭りなので、みんな気合が入っている。
 テイトにとって、初めてのことであり、同時にフラウと恋仲になってからも初めての催しであった。

ただし、この夏祭りに参加するにはひとつ条件があった。




(毎年恒例! バルスブルグ教会夏祭り!お年寄りから赤ん坊まで大歓迎!※ただし参加者は全員浴衣or甚平〈じんべい〉を着用すること!)



「ゆ、かた?」
「なんだオメー、浴衣も知らないのか?浴衣って言うのはな、かわいこちゃんたちの普段は隠されたナイスバディがおがm・・・」
ガンッ!
「テイト君に何てこと教えてるんですか、あなたは。」
「テイト君、浴衣って言うのはね、お祭りのときに着るゆったりした服のことだよ。まぁ男の人の場合甚平だけどね。」
「へぇ〜、そうなんですか?オレ、ずっと軍にいたからそういうの疎くて・・・」
「じゃあ今年は今まで味わえなかった分も楽しまなきゃね!」
「はいっ!」





 そして夏祭り当日。



(確かにこれゆったりしてて暑い日にいいな・・・)



「お〜いフラウ!着替え終わったぞ!」
「どれ、ちゃんと着れた、か・・・」
「・・・なんだよ!いきなり固まりやがって!俺には似合わないって言うのか!」
「いや・・・メチャクチャ似合ってる」



藍色の生地に薄い水色で花火が散りばめられた甚平は、テイトによく似合っていた。


(やべぇだろ、これは・・・)


甚平から見える脚は今まで本当に戦闘用奴隷だったのかと思わせるくらい傷ひとつなく、腰のところで結ばれた付け紐によって細いテイトの体がより細く見えた。時折襟口から覗く、鎖骨がなんとも扇情的であった。また、初めて着る甚平が恥ずかしいのだろうか、頬をほんのり朱色に染めていた。こんな格好をしていたら、フラウでなくても襲いたくなるものだ。


「オイ、クソガキ、今日は俺から離れるんじゃねぇぞ」
「? おぅ、分かった」

(こんな姿他のやつに見られてたまるか!)



「祭りの最後には花火が上がるんだよな!!!オレ、花火って見たことないからすっげー楽しみ!!!」
「じゃあ。いくか」
「うん!!!」


年に一度の大イベントなので、会場はこれでもかと言うくらい人、人、人。



「うわ〜。すげー混んでるな」
「はぐれるんじゃねぇぞ」



屋台に目をとられていたテイトはフラウから離れてしまう。



「あっ! 待ってフラウ!」
「ったく、行ったそばから・・・」
「しょーがねーだろ!初めてなんだからさ!」
「ほら、手ぇ繋ぐぞ」
「え!、ここで!?」
「大丈夫、誰も見てねぇよ」
「あっ、ちょっ、おい!」



そういうや否や、フラウはテイトの手を握って歩き出す。いつもは手袋越しの体温しか味わえないテイトにとってとてもうれしいことだった。同時に、彼は本当に生きていないんだと、思い知らされることだったが、自分の体温でフラウの手を暖められたらいいのに、と願うテイトだった。



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